シン・UX 2017 ~プロダクトマネージャー・プロダクトオーナーにとってのUXのイマとミライ 行ってきた

なぜ行ったのか

 

 もともと良いものを作りたいというモチベーションでエンジニアになったが、業務を続けていくうちに良いものを作るには、良いもの(=ユーザーにとっての理想の状態・課題が解決された状態)を定義できなければ話にならないということを感じ始めていた。

 

おそらく良いもの≒良いUXだと思っているので、自分には良いUXを設計していく力というものが足りていないということになる。良いUXを作るため、どういうことが必要なのか、まずはそれを自分なりの言葉で定義できるようになる必要があると考え、その示唆を与えてくれることを期待してこの勉強会に参加した。

 

所感

そもそもUXを自分の言葉で定義できない

まず最初にイベント主催者の関さんから開場の言葉があった。この時会場全体に、「UXとは何かを自分なりの言葉で説明できる人は挙手してほしい」と呼びかけがあった。挙手した人にはその場でUXとは何かを説明してもらう、という太い釘が刺されていたのもあるだろうが、誰も手を挙げず皆自分と同じようにUXとはなんだろう、というモヤモヤ感を持って集まっている様子だった。

私も御多分に洩れずUXというものがなんなのか、自分の言葉で説明できないクチだった。良いUXを作りたい、と言っているのに良いUXとはなんなのか、説明できないなんて笑い話なので、まず第一の目標として講演を聴き終えた時点で自分なりのUXの定義を持つこと、を設定した。

個人的に一番参考になったのが、松田大介さんが言っていた、UXとは「なぜそれを利用し続けたいのか、の問いに回答できる個人の体験」という定義だった。

自分なりにこれを噛み砕くと、UXとは

なぜ【ここにあなたがユーザーにやってもらいたいことを入れよう!】と思ったのか、の問いに回答できる個人の体験

ということになるし、良いUXとは

なぜユーザーは【ユーザーの欲求が満たされた理想の状態を入れよう!】と思ったのか、の問いに回答できる個人の体験

ということになるのではないだろうか。

ひとまずは上に書いた定義で自分の中で腹落ちしたので、この定義の上でUXを作る・考える(設計する)ということは何なのか、考えていくことにした。

 

UXを作るためのHowにとらわれてはいけない

今回の講演でも、様々な人が自分たちが使っているUX設計の手法について発表してくれていた。

思い出せる限りでも、

・バリュープロポジションキャンバスを作って検証する

・悩んだら体験を細かく要素分解する。細かく要素分解すると、本質的な価値ではない部分が見えてくるのでそこを省いたり改善する

・検証手法としてのHi-fiプロトタイピングの取り入れ

・顧客開発の指標としてProblem/Solution FitやProduct/Market Fitを取り入れ

・リーンキャンバス

・プロトペルソナ

・6up sketches

 

などの手法が挙げられていた。

ただ、これらの話を聞いていても、正直腑に落ちないことが多かった。

この時点ではまだうまく言語化できていなかったのだが、これらの方法はあくまでUXを設計するための手法(How)の部分であって、手法をなぜ使うのか、どうしてこの手法を選んだのか、という部分が抜け落ちるとただ手法を使っただけになってしまうのではないか、という不安感のようなものがあった。

 

これらの手法を体系的に学び、実践できるようになることには間違いなく価値があるだろう。

ただ、これをただ持ち帰っても根本的になぜこの手法を選ぶのか、という視座が抜け落ちてしまうのではないかーーーあるいはこれらの手法で作り出される最終成果物を出しただけで自分は満足してしまうのではないかーーーそんな不安を拭いきれずにいた。

 

そんな違和感を抱えてこの記事を書いていたのだが、ちょうどこれらの手法についてgoogle検索をかけていると、今回の講演の最終発表者だった坂田さんのブログにたどり着いた。

ちょうど自分が感じていた違和感が綺麗に言語化されていたため、冒頭のみ引用する。

 

ハウツーが豊富な実用書ばかりを手に取るくらいなら、Q思考という書籍を推奨します。もともと当ブログでも何度も言及しているとおり、首題となる人間中心設計や UX デザインと呼ばれている手法体系は「問題解決」に重きを置きがちです。問題を解決するための手段として徐々に普及していますが、正しくモノをつくろうとする(正しい答えを求めようとする)意識が先行してしまうが故に、正しいモノの追求(正しい問いの追求)という本質が抜けてしまっているように思えて仕方がありません。

 

sprmario.hatenablog.jp

 

この時点で、自分が知りたかったもの、学びたかったものは『正しいモノ(正しい問い)を追求するためのものの考え方』だったのだと考えるようになった。

もちろん、人間中心設計やUXデザインといった解決の手法に価値がないといっているわけではない。ただ、そういったHowと同じくらい、あるいはそれ以上にWhyという部分は大事だし順番としてはまず先に正しいモノを定義することが必要になると思う。

 

自分の中でUX設計というのものを考えた時に、

・なんのために作るのか(Whyの部分)

・何を作るのか(Whatの部分)

という部分が不可分で切り分けできていなかったので、手法の話だけ聞いても片手落ち感が拭えなかったのだと思う。両方大事で、両方自分には足りていない。

 

何を身につけるべきか、というのを自分の中で具体化できただけでも、今回の講演を聞きにいった価値があったと思う。主催者さん、講演者のみなさん、本当にありがとうございました。

 

これから

早速だが、この後「Q思考」を読んでみようと思う。

後、ちょうど登壇者の人が過去に産業能率大学の人間中心デザインの講義を受けていたと聞いた。

http://aiit.ac.jp/certification_program/hcd/

半年間に渡って人間中心デザインについて体系的に、かつ演習も含めた形で講義をしてくれるらしい。先ほど書いたHowの部分に当たる技術だと思うが、過去の記録を見ると自分と似たような悩みを持つエンジニアの人が受講しているように見える。今年の出願で応募してみようと思う。