書評:Q思考
先日のブログで紹介したQ思考の書評
三行書評
要約(1)
美しい質問とは私たちが物事を受け止める、あるいは考える方法を変えるきっかけになる質問のことだ。
こうした質問はググって見つけることができるような類のものではない。答えを探すことは難しいが、答えを見つけることが不可能なわけではなく、もし答えることができればゲームのルールを変えてしまう可能性を秘めた問いのことだ。
多くの画期的イノベーションは、一つ、あるいは一連の美しい質問と、それに対する回答が出発点になっている。良い製品を作るには良い疑問、投げかけるべき正しい質問や解決すべき正しい問いが何なのかを理解する必要がある。
要約(2)
美しい質問をするためには、質問の内容を「なぜ?」「もし〜だったら?」「どうすれば?」という3つの過程に分解して考えるといい。
なぜか。美しい質問を探すプロセスでは、様々な不明な点に遭遇する。ただ、それぞれの段階で何を問うべきかについて一定の感覚を持っていれば、何が良い質問かわかっていなくても、何をするべきかはわかっていられるからだ。
専門家が問題に対処する様子を観察しているうちに、私は彼らの物語には一つのパターンがあることに気づいた・主人公が理想とは程遠い状況に遭遇し「なぜ?」と問う。・改善策/解決策のアイデアを思いつき始める。多くの場合、それは「もし〜だったら?」という仮説のかたちで現れる・主人公はそれらの可能性の一つに注目し、それを現実に移そうとする。多くの場合、この段階には「どうすれば?」を見つけ出すプロセスが入っている
要約(3)
専門知識や客観的事実・データの価値は、少しづつ落ちてきている。大事なことは問いに対する回答を考えるときに、その知識を生かせるかどうか。
テクノロジー(ここでいうテクノロジーとは主に情報技術を指している)の進歩によって、人間は一瞬で莫大な量の知識やデータ、情報資源にアクセスできるようになった。
ある技術が一部のプロだけが使える特殊なものから、一般の人が使えるものになるまでの期間(コモディティ化)までの時間もどんどん短くなっている。だが、技術に精通していると美しい質問に対して革新的で驚くような答えを提供することができる。
所感
パナソニック、ソニー、東芝などの日本を支えてきた大企業に元気がなくなると、誰かがおきまりの文句のように「技術では外国に負けていないのに」というのがずっと気になっていた。
では、これらの大企業には何が足りていなかったのか。その技術が良いプロダクトを生むための「良い課題」「良い問い」を見つけ、答えとなる技術と繋げることができる人材が少ないことが問題なのではないかと思った。
私はエンジニアなので、一般的な世間の人と比較すると技術に詳しいと思っている。また、この技術が一体どんな課題を解くのに役立つかわからないが、何かに役立ちそうという技術に触れることもよくある。そしてこの感覚は、自分以外の多くのエンジニアも1回や2回ぐらいは感じたことがある感覚だと思う。
この状態はTaka Umadaさんが、自身のブログで「答えが問いを待っている状態」という言葉で表現されている。
通常、先に問いや課題があって、それに対する答えや解決策を探します。つまり「問いが答えを待っている」のが普通です。その答えを求めて、解決策や技術を探します。
しかし一方で、技術系スタートアップや工学部の学生の皆さんと会っていると、先に答え(技術)があって、それに最適な問い(課題)を探しているパターンに出会います。つまり、使いたい技術が先にあってアプリケーションを探す、というパターンです。
最近までこの「答えが問いを待っている状態」というのは、手段と目的が入れ違っていて、良いプロダクトを作る上ではアンチパターンになるのではないかと考えていた。
だが、このブログで紹介されているレーザーの例やiPadの例は、問いが先にあって、後から解となる技術が出てきたわけではない。基盤となる技術が先に出てきていて、後からこの解が使える美しい問いが見出された。
大事なのは、コモディティ化されていない解を解自身とは一見何の関係も見えない美しい質問と紐付けることができるか、ではないだろうか。
技術者である以上、一般の人に比べて「解」に精通しているのは当たり前だ。技術が陳腐化する速度が早い現代にとって、技術者の価値は技術がハマる良い課題、良い問いを誰よりも早く見つける力ということになっていくのではないか。
あとは、これらの本で紹介されている「なぜ?」「もし〜だったら?」「どうすれば?」のプロセスでそれぞれ大事なことや、具体的な良い質問を作るための手法についての紹介が、かなり参考になった。